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サイバーエッセイ 第1回


コンサルタントの使命

私が、一般的なアプリケーション・エンジニアの世界から、システム化方法論や開発ツールの世界へ飛びこんで、かれこれ15年が過ぎようとしています。これまでに、私はコンサルタントという立場で、多くのプロジェクトを通して、さまざまな管理者、エンジニア、ユーザーの方々と出会い、実に多くの経験をさせていただきました。

私は、ユーザーにとって今何が一番大切で、何をしなければならないかということを明確にするナビゲーション役(水先案内人とでも言っておきましょう)を一貫して務めてきました。皆さんがコンサルタントに対して多くの期待を持っているのは事実ですが、コンサルタントというのは、港で見かける船にたとえると、水先案内人であって決してタグボートではないのです。ところが、我々はしばしば、このタグボートの役目を強いられることがあります。これはコンサルタントの本来の姿ではありません。コンサルタントは、ナビゲーターとして本当の力を発揮することができるのです。(現実はタグボートの仕事が実に多いのです。これも私の使命なのかもしれません。)

要するに、コンサルタントとはプロジェクトの成功を「手助けをする人」なのです。プロジェクトのメンバー自身が努力する覚悟がなければ、いくら良いコンサルタントがいてもどうにもなりません。プロジェクトを推進する「あなた」がしっかりと戦略と着地点を見定めてこそ、コンサルタントの仕事が生きたものになり、良い結果が得られると考えています。

コンサルタントは失敗プロジェクトからノウハウを学ぶ。

いつもこのような立場で、方法論やツール等の最新技術を適用するといった顧客の組織改革に関わる仕事をしていると、自然と物事の本質を見る目が養われてきます。私にこのような力を与えてくれたのは、お客様であり、プロジェクトに従事したメンバーです。特に難しいプロジェクトで苦労を共にしたユーザー、エンジニア、そして私の仲間達がこれに当たります。

私は、ある時期、複合的なトラブルで末期的になったプロジェクトの建て直しを担当する機会を得ました。最初は打つ手がないと思われたプロジェクトも、1日、2日、1週間とメンバー達と解決に向けてもがいているうちに糸口が見つかってくるものです。これは本当です。どんなに難しいプロジェクトでも、絶対に解決策は見つかります。私は成功プロジェクトよりもむしろ失敗プロジェクトから多くのことを学びました。今では、これらの経験をくださった全ての人々に、大変感謝しています。

皆様にお伝えしたいこと

私としては、いろいろな方々から多くのこと(ノウハウ)を教えていただいたのに、十分なお返しをしているとはいえません。このような背景からこの連載を手がける気になりました。私が、このエッセイで重点的に伝えていきたいことは、技術と技術の狭間にあるもの、技術を使いこなすための物事の考え方・捉え方、情報技術を通して見ることができた精神文化などなど、技術書には絶対に書かれていない情報技術で成功するための本質論です。つまり、理論と実戦の両方の経験によってのみ得ることができる本物の「知恵」の部分です。

エッセイのカテゴリー

次回からは次の7つのカテゴリーに分類して述べていこうと思っています。

  1. 方法論の国から多様な技術の世界へ
    方法論との出会いから最近の活動内容について述べていこうと思います。
  2. カルチャー・チェンジ(新文明開化)
    カルチャーとは、システム開発の土台となる基本的な考え方と風土であり、システム開発に携わる各メンバーの無意識な行動の基礎となります。バブル崩壊から10年近くが過ぎとし、企業は新たなカルチャーへの変革を迫られています。ITプロジェクトを通してみるカルチャーの方向性を考察します。
  3. IT動向について
    DOA、OO、クライアント/サーバー技術、インターネット/イントラネット等、最新のテクノロジーの見方、考え方について述べます。
  4. DOAとは、OOとは何か。
    DOAやOOは多くの企業が関心を持つ重要な課題です。現在、私が考えているDOAとOOの基本的な部分について述べていきます。また、最近話題のBO(ビジネスオブジェクト)とパターンについても考察していきます。
  5. 方法論・ツールの捉え方・コツ
    システム開発のアプローチ方法と自動化ツールについて述べます。開発ツールを始め、構成管理ツール、プロジェクト管理ツールなど、数々のツールを含みます。
  6. 新しい時代のプロジェクト管理について
    私が、ここ数年力を入れて取り組んでいるのが、新世代のプロジェクト管理とはどうあるべきかという課題です。プロジェクト管理のコンセプト、プロジェクト管理の管理サイクル、プロジェクト管理の支援ツール、計量や見積について、さらに、IT組織の成熟度を上げるためのプロセス管理の考え方について述べたいと思います。
  7. 組織・マネジメントと人材
    統合化された方法論を具体的に適用するための組織のあり方、チーム編成の方法とマネジメントを示します。また、今後のシステム開発を進めていく人材のあり方・役割についての基本事項を考察してみたいと思います。

これらのカテゴリーにある活動は、すべて株式会社アイ・ティ・イノベーション(略称:ITI)のドメイン(事業領域)であり、革新(イノベーション)のメイン・テーマです。私どもは、実戦とともにこれらのテーマに関する解決策を追求しています。最後に、私のこのような気持ちを、ITIの理念として表わしている事についても申し上げておきたいと思います。

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林衛
IT戦略とプロジェクトマネジメントを中核にITビジネスのコンサルティングを行うアイ・ティ・イノベーションのファウンダーであり社長を務める。◆コンサルの実践を積みながら英米のIT企業とかかわる中で先端的な方法論と技術を学び、コンサルティング力に磨きをかけてきた。技術にも人間にも精通するPM界のグランドマスター的存在。◆Modusアカデミー講師。ドラッカー学会会員、名古屋工業大学・東京工業大学などの大学の講師を勤める。

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